近年の物流業界の変化や慢性的な人手不足問題などにより、海外で導入が進んでいるAMRロボット。近年では、日本でも関心が高まっています。
これまで搬送業務の自動化で一般的といわれるAGVとAMRの違いについて解説します。
AMRは「Autonomous Mobile Robot」を略したもので、日本語では「自律走行搬送ロボット」といいます。
カメラやレーザSLAMで倉庫内の設備や障害物などを認識し、環境地図を作成。その地図上での自己位置を推定し、自動算出したルートを走行します。
人や障害物に対しては自動で減速や停止、回避を行います。磁気テープなどの誘導体を必要としないため、倉庫のレイアウト変更にも素早い対応が可能。人と協働するために安全に設計されたロボットです。
AGVは「Automatic Guided Vehicle」の略で、日本語では「無人搬送車」「自動搬送車」と呼ばれています。車両と位置づけされるものです。
磁気テープなどの誘導体によって設定した固定ルートを走行し、誘導体には電磁・光学・画像などがあります。
誘導体がない場所での走行はできず、ルート上に障害物があると停止してしまいます。導入の際はスムーズに運行できる場所の確保と誘導体の設置が必要なため、費用と時間がかかり、レイアウト変更にも工数がかかります。
AMRは頻繁にレイアウト変更が必要な現場、あるいは季節など時期によって作業が増減する工場や物流倉庫に適しています。磁気テープなど誘導体を設置するスペースがない施設でも導入しやすいでしょう。
AGVはレイアウトが変わらない場所での材料や部品の運搬に向いており、農場で資材や収穫物の運搬や、ホテルでリネン類の交換作業などに活用されています。
近年、EC市場の急拡大や消費者ニーズの多様化に伴い、物流業界や製造業界では人手不足が深刻化しています。従来の作業工程は多くの人員を必要としていましたが、高齢化社会の進行や若年層の労働人口減少によって十分な人材確保が難しくなっています。このような状況下で、作業効率の向上と省人化を実現できるAMR(自律走行搬送ロボット)の導入が注目されるようになりました。
また、消費者が求める配送スピードの加速や多品種少量生産への対応を考えると、作業現場は柔軟かつ迅速に変化できるシステムを必要としています。AMRはこれらの課題を解消し、限られた人員でも高いパフォーマンスを発揮できる手段として期待されています。
海外、とりわけ北米や中国を中心にAMR導入が進んでおり、すでに倉庫内のほとんどをAMRで稼働させる企業もあります。一方、日本国内ではまだ実証実験や一部企業による導入フェーズにとどまるケースが多いのが現状です。
しかし、近年はDX推進や生産性向上施策の一環として、AMRに関する関心が高まってきています。政府や自治体の補助金制度、技術研究機関との連携強化などの動きによって、今後は国内のAMR市場もさらに拡大していくと予想されています。
このように国内外での導入事例が増えるにつれ、AMR技術の成熟度やコスト面の改善が進み、導入ハードルの低下も見込まれています。
AMRが自律走行を可能にしている最大の要因は、周囲の環境をリアルタイムで把握しながら走行ルートを判断できる制御技術にあります。具体的には、レーザーSLAMやカメラによる画像認識技術を用いて周囲の障害物や地形をデータ化し、自身の位置を高精度に推定します。これによって、人や機械設備など動く障害物があっても回避が可能で、固定の磁気テープやガイドが不要になるのが特長。
さらに、一度マッピングした情報はシステム内に蓄積されるため、倉庫や工場内でレイアウトが変更された際も、短時間で経路を再計算して適応できます。この柔軟性が、変化の激しい生産現場や物流倉庫で重宝される理由の一つとなっています。
AMRは多種多様なセンサー情報をリアルタイムで統合し、最適な経路計画を行います。その背景には、AI技術や機械学習を活用したアルゴリズムの存在が不可欠です。センサーが取得したデータを解析し、危険な衝突を避けるだけでなく、運搬物の位置情報や優先度を考慮して効率的に動くことができます。
また、必要に応じてクラウドと連携し、大規模な運行管理システムと情報をやり取りするケースも増加中です。このように、高度な制御アルゴリズムがあるからこそ、AMRは単なる搬送ロボット以上の役割を担い、現場の最適化や生産性向上に貢献しています。
AMRは、重い荷物を長距離運搬したり、繰り返し行われるピッキング作業を自律的に行うため、従来は多くの人員を必要としていた部分の省力化が可能です。これによりスタッフはより付加価値の高い業務に専念でき、結果としてオペレーション全体の生産性が向上します。
さらに、日々の作業に熟練を要しないため、新人が多い現場でも早期に安定した稼働が実現できます。人手不足が顕在化している物流倉庫だけでなく、生産ラインや医療機関などさまざまなシーンでの活用が期待されています。
AMRは労働環境の改善と生産効率のアップを同時に実現し、人材不足問題の解消にも寄与しているのです。
AGVのように床面に磁気テープや誘導線を敷設する必要がないため、初期導入コストが比較的抑えられるのもAMRの大きな強みです。倉庫やラインのレイアウト変更が生じても、ソフトウェア側の設定変更だけで済むケースが多く、運用コストの削減にもつながります。
また、季節や需要に合わせてロボットの稼働台数を調整することも容易で、繁忙期は稼働台数を増やし、閑散期は必要最小限に抑えるといったフレキシブルな運用が可能です。この柔軟性は、急激な生産数の変動に対応しなければならない現場や、多品種少量生産が求められる工場などで特に有効です。
導入に際しては、リースやサブスクリプション方式など多彩な選択肢も増えており、資金繰りやリスクを最小限にした運用が実現できます。
導入を検討する際は、まず現場調査を通じて搬送ルートや障害物の位置、運搬物の種類や重量などを詳しく把握することが重要です。その上で、どのエリアにどの規模のAMRを導入するか、必要なセンサーや通信インフラの仕様はどうするかなど、詳細な要件定義を行います。
この初期段階が不十分だと、後々の設計変更や運用トラブルの原因となるため、時間と労力をかけて慎重に進めることが推奨されます。
加えて、セキュリティ対策や安全性の確保も要件定義時に検討する必要があり、施設全体の運用ポリシーに合ったシステム構築が求められます。
要件定義を終えたら、いきなり本稼働に移るのではなく、まずは限定した範囲でのテスト稼働を行います。この段階ではAMRが正しくセンサー情報を取得し、計画どおりに搬送作業をこなせるかを細かくチェックします。
もし問題が発生した場合、ソフトウェア設定や地図情報の修正を行い、想定外の障害物対応や安全対策のブラッシュアップを図ります。テスト稼働によって得られたデータは、その後の本稼働に向けた最適化のベースとなり、長期的に見た稼働率向上とトラブルリスクの軽減につながります。
AMR導入にかかる費用には、ロボット本体の購入費用やレンタル料、ソフトウェアライセンス、システム連携に必要なインフラ構築費などが含まれます。さらに、メンテナンス契約や保守サポートに係るランニングコストも考慮が必要です。
ただし、自動化による人件費削減効果や作業効率の大幅な向上を加味すると、導入後のROI(投資回収期間)は数年から数か月レベルで回収できる事例も見受けられます。
最近では各種補助金制度やファイナンスリースなど、企業の資金負担を軽減する仕組みも整いつつあり、導入ハードルは年々下がってきていると言えるでしょう。実際に導入する際は、投資対効果を綿密に試算し、自社のオペレーションに最適なプランを選ぶことが成功のカギとなります。
AMRロボットには搭載したカメラやセンサーで位置を把握し、人や障害物を避け、商品の場所を示したり、重量物を運搬したりするといった多くの性能が備わっています。
物流倉庫や工場、施設など、さまざまな場所で活用でき作業員の工数が減らせるAMRロボットを、このサイトでは積載重量別に紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
「指示だし簡単な小型」「精緻なコントロール」「重量級可搬」
のかゆいところに手が届くおすすめAMRロボット3選
現在AMRロボットの導入を検討している方向けに、もう一歩踏み込み、「小回りの利く小型」「精緻なコントロール」「重量級可搬」のかゆいところに手が届くAMRロボットを紹介します。
狭いスペースで
稼働できる小型機1辺60cmのコンパクトサイズで狭い通路(最小通行幅80cm)でも使用可能。コンパクトでも100kgまでの荷物を運べる。
高精度な制御機能で
組立装置とも連携よし2次元コード誘導も併用でき、組立装置などへの部品供給に必要な正確な位置合わせが可能。(停止精度±5mm、停止角度±0.5度)
高い耐荷重能力
最大積載量2500kg高い耐荷重能力と堅牢な設計が求められる最大積載量2トン以上のAMR。